ハーズバーグは、人間のモチベーションについて、①不快を回避する欲求と、②精神的に成長し自己実現を求める欲求とは全く異質なもので、両者の欲求は全く別個の要素により充足されるものであるという仮説を立てました。
すなわち、人間は2組の欲求を持っていて、その1つは、「生命の喪失、飢え、痛み、性的欠乏などの回避、その他の一次的動因、およびこれらの基本的動因に付着するようになった無数の学習的恐れ」など、動物的素質からくる人間性、すなわち前述①の欲求であり、もう一つは、「継続的な精神的成長によって自らの潜在能力を現実化しようとする脅迫的人間衝動」と説明される人間性、すなわち前述②の欲求です。
少し難しいですが、このまま続けます。
そして、ハーズバーグは、①の不快回避欲求をいかに充足しても、人間は不満足感が減少するだけで、なんら積極的満足感を増加させることはなく、また、②の自己実現欲求を十分に充足すれば、積極的満足感を増加できるが、たとえ、この欲求を充足できなくても積極的満足感が減少するだけで必ずしも不満足感が増加するわけではないと考えています。
要するに、①の不快回避欲求を充足させる要因は、不満足感の増減にだけ関係し②の自己実現欲求を充足させる要因は、積極的満足感の増減にのみ関係するのであって、①を充足させる要因が②に効果を及ぼしたり、あるいはその逆に②を充足させる要因が①の効果をもたらすことはあり得ないという仮説を設定したのです。
この仮説を実証するために、アメリカのピッツバーグで約200人の技師と会計士を対象に面接を行い、いかなる場合に仕事について積極的満足感や不満足感を味わうか、換言すれば、いかなる場合に仕事に対しよい職務態度を示し、あるいは悪い職務態度を示すか、を質問した。そのおもなる結論は次に示すとおりでした。
図中の達成・承認・・・など10項目は、各応答者が話した「客観的」事象の要約を示す一種の略式表記です。各箱の左右のひろがりは、応答者が述べた事象に当該要因があらわれた度数を示し、各箱の上下の幅は、職務態度の変化がよい方向にせよ悪い方向にせよ、持続した期間の長短を示しています。すなわち各箱が右にいくほど当該要因が積極的満足感を招きしやすく、左にいくほど不満足感をもたらしやすことを示し、各箱の上下幅が大きいほど当該要因が積極的満足感(または不満足感)を持続させやすく、上下幅がせまいほど持続させにくい(大体2週間以内)ことを示したものです。
同図を見ると、積極的満足感(職務満足)を招いた要因は、達成、承認、仕事そのもの、責任、昇進で、そのうち、仕事そのもの、責任、昇進の3要因はまたよい職務態度(仕事に対する意欲や情熱)を持続させる要因でもあります。また、不満足(職務不満)をもたらした要因は、会社の政策と経営、監督技術、給与、対人関係-上役、作業条件の5要因です。
大切なことは、積極的満足感で示された要因は不満足感の要因にはならないという顕著な傾向があることで、図の右半分、すなわち積極的満足感-職務満足を生み出す達成、承認、仕事そのもの、責任、昇進の5要因は、不満足感-職務不満をもたらす図の左半分にはほとんど無関係であり、逆に、会社の政策と経営、監督技術、給与、対人関係-上役、作業条件の5要因は、不満足感を減少させる要因にはなっても、積極的満足を増加させる要因にはならないのです。積極的満足を生む5要因は、職務をとおして精神的成長ならびに自己実現を可能にする性格をふくみ、真に人間を動機付ける要因となるため、これを「動機付け要因」と呼び、不満足を解消しうる5要因は、真に人間を動機付ける要因にはならないが、職場に発生するもろもろの不快な状況を取りのぞき良好な環境を維持する可能性をもつため「衛生要因」と呼ばれています。
ところで、科学的管理法にしても人間関係論にしても、これまでは衛生要因にばかり注目し、直接職務に関係する肝心の動機付け要因にはさっぱり関心を払わなかった。
現代の管理者は、動機付け要因に注目し、精神的成長ないし自己実現欲求充足の場を与えなければなりません。そのためには、ハーズバーグは、①動機付け要因に意識を向けさせるための従業員と管理者の教育、②職務充実、③技術的陳腐化・従業員間にある低いレベルの職務遂行・経営上の欠陥などに対する治療、が必要であると説いています。
どうですか?
少し難しい話でしたが、一度じっくり考えてみて、ここから社員・部下・そして自分のモチベーション向上を考えてみてはどうでしょうか?

